このところどのような事案(リフォーム含む)でも図面が少ない、かつ単なる「民間契約書」で契約をしている発注者を見かけるが、とても恐ろしいことである。
結果、トラブルになっていることが多い。
「契約書」とは「約束を紙に書いたもの」なのだということで安心してしまうのだろうか?
けして「民間契約書」が悪いというのではないが、できればトラブル防止のために「(旧・四会連合会発行)工事請負契約書・同契約約款・仲裁合意書付き」をお勧めする。
こうした場合に気付くのは、契約の内容そのものが問題になるのだが、図面もマンガのような紙数枚で、工程表も無く、工事数量がきちんと書かれた見積書は皆無で、プアーな見積書がほとんどである。
基本的に、そこには「設計監理者」は介在せず、発注者と工事会社との間の2者で直接契約されることがほとんどあり、契約におけるチェックすらない。
リフォーム工事などにおいては玄関先で建物を一見した紙ぺら1枚の見積書に数百万円の金額が書かれており、これを頼りに発注者から印をもらい「受発注」を成立させる不届き者もいる。
特に、広告塔になることを条件に、200万円値引きされたからという理由だけで300万円の「受発注書」に、新聞屋の勧誘と同列でサインしてしまう発注者のなんと多いことか!
残念ながら、あなたの期待は裏切られ、実質工事費は150万円にも満たないことが多いのです。
あなたは契約の本質を間違えています!
リフォーム工事も含め10万円の契約でさえ、契約を甘く見てはいけません!!
無論、建替えや新築などもっと厳密なものでなければなりません。
契約の形態が正しいか否かのジャッジは、第三者としての「設計監理者」に介在を依頼することが最も安全です。
2016年1月8日・文責:建築家 小杉卓
設計者が作成する設計図面(仕様書含む)は「契約書」の一部(同等)だということの認識が必要です。
小杉語録での「線は文字ほどにものを言い!」 がそのものズバリで、紙に書かれた線記号の集合は日本のみならず世界共通の専門的業界言語として「契約書」になっています。
専門教育(作図・製図能力)を学習した技術者なら図面の読解や意図の伝達は図面を介することで可能になので文書(書面)と同じ効力を有します。
特に、機械系をはじめ建築系や土木系の仕事を生業にする人たちは必ずと言ってよいほどその業界の図面が読めるように学習していますので、文字では書けないところまで図面で表記することは可能で、、逆に文字では書ききれないところまで読み取れるわけです。
つまり、図面を描く設計者は文章を書くごとく図面を描いて「意思伝達」をしているのです。ですので、図面は契約書の一部として公に認められているのです。
となると、設計者の図面表現は大事になるわけで、そこには何を書かねばならないかの必然が生まれます。
では、この図面はどのようなものに・どのようなことに作用するのでしょうか?
それは、形であり、大きさであり、色であり、材質であり、設置する場所であり、数量などであり、これらが見積書に記載されていくのです。
ですから、本来、図面もないのに数量が約束されることはありません。
始めから形が存在する「既成品」でさえ、ましてや架空(希望・要求)の空間に莫大な費用を投じねばならず、なおかつ架空(希望・要求)のものを現実のものに造り上げて行かねばならないわけですから、図面は断じて軽視してはいけません。
2016年1月8日・文責:建築家 小杉卓
一般に、工事契約には契約書のほかに契約約款(仲裁合意書)、設計図面(仕様書含む)と見積書と工程表が添付されることが確実性の担保なのですが、値引き額の大きさに満足し、工事契約額に安堵して、ろくな図面もないような状況で「契約成立」としているところに効果的な「約束」はありません。
つまり、架空(希望・要求)のものを立体する「約束」を図面(仕様書含む)にして叶える仕事人が設計者です。
さて、その設計者は「約束」を図面に書きますが、図面(仕様書含む)にはいろいろなことが網羅されます。
設計はこれらを図面に網羅することで、「何をどこにどのようにしたいのかという約束」を作っています。
これらを熟知している設計者はなかなかいません。
特に、5.や6.まで熟知している設計者はごく少数です。
擁壁や地下についてはさらに少なくなります。
弊社は設計事務所として設計の経験値も高く、現場(工事指導)の経験値も高く、どのようにしたら効果的に解決が図れるかを絶えず考えています。
この『効果的な解決』こそが、コストダウンの最大要因なのです。
例えば、
これでは工事費は安くなるどころか、高くなってしまいます。
大事なことは、「効果的な解決を考えること」です。
それが本来の設計です。
そして、考えたことを図面に残し、その図面に基づき見積もってもらい、図面の通りに工事をすることです。
ただし、考える人が「効果的な解決手法」を持ち合わせない設計者だとしたら・・・
工事費の低減は難しいですし、おそらく工事費は逆に上がってしまいます。
2016年1月8日・文責:建築家 小杉卓