住まいの無料相談室

Q. 擁壁の底板と鋼管杭が干渉する場合の建築方法について

2010/02/10#2 US 様 (東京都)

検討中(契約前)
工事内容
基礎
賃貸マンション(RC)

現在注文住宅の建築用地として購入を考えている土地について、ハウスメーカーから提案されている建築方法に不安を感じており、専門家としてのご意見を伺いたくお問い合わせをさせていただきました。

まず、購入予定の土地や周囲の状況を整理すると、下記の通りです。

・当該の土地は山林を4年ほど前に大規模造成を行い開発された分譲地内の一区画で、周囲の区画と比較すると最も高台に位置している。

・上記分譲地の販売計画が最近まで凍結されていたため、現場は宅地造成を行った当時の状態のままとなってお、当該区画を含め全区画とも現在まで住宅は建築されていない。

・購入予定の区画の南側は市が所有する山林と隣接しており、山林側は高低差13mほどの下りの自然がけとなっている。がけ下には民家が1軒存在するが、擁壁やその他の人工的な土留め等は施されていない。

・区画の北側は幅員6mの公道と平行に接しているが、道路面との高低差が約2mあるため、高さ約2mのL型RC擁壁が設置されている

・区画の東側は隣区画の駐車場と通路(いずれも道路面と高低差無し)があり、同じく高さ約2mのL型RC擁壁を隔てて接している。

・区画の西側はRC3階建ての老人ホームが敷地の境界ギリギリに建っている。老人ホーム側の敷地はこちらよりも1mほど低いが、老人ホームの1F部分が一部地中に
埋まる半地下のような状態で建っており、境界に擁壁などは設けられていない。

・前述のL型RC擁壁は造成時に建築されたもので、確認済証と検査済証を取得している(いずれも現在取り寄せ中です)。

・いずれの擁壁も底板が内側(敷地の中心方向)に約2m程度伸びている。


上記の土地に延床面積40坪、建床面積20坪程度の2階建て木造2X4住宅を建築したいため、あるハウスメーカー(●●社)に相談したところ、下記のような説明を受けました。


当該地域の建築確認を担当する県の土木事務所に(●●社の方が)確認したところによると、「宅地面の一部が南側のがけ下から35度の角度で引いた安息角よりも上方に位置している可能性があり、安息角の斜線よりも上方に位置する領域に基礎を配置する場合には、鋼管杭を使用した地盤改良を行い、杭の下端が安息角の斜線より下まで届くよう設計する必要がある」との見解を得たとのことでした。

その後F社が鋼管杭の打設について検討した結果、安息角の問題をクリアするには最もがけ側の部分で深さ5mまで杭を打設する必要があるとともに、杭はがけ寄りの一部分だけでなくベタ基礎の全体に配置しなければならず、現在計画している間取りでは大体40本ほどの杭を配置する必要があり、その費用は約100万円程度かかるとのことでした。

また、現時点では地盤調査をしていない段階のため、もし軟弱な地盤であれば支持層まで杭を打つ必要があるので、その場合には杭の長さが5mでは足りず追加の費用が発生する可能性があるとのことでした。

さらに予定の間取りでは、建物の配置が北側と東側の擁壁に1m前後まで接近することを避けられず、前述のL型RC擁壁の底板が約2mほど内側(敷地の中心方向)に伸びていることから、擁壁の2m以内に建物を配置しようとするとベタ基礎の一部が底板の上方に重なるため、その部分の杭は擁壁の底板に干渉しない位置にずらして配置しなければならないのとことでした。

もし擁壁側の基礎の外周部分に杭を打てない場合には、荷重のバランスを考慮して基礎を補強した設計とする必要があり、これに追加の費用が発生するとのことでした。

しかし、それを嫌って基礎が底板の上方に乗らないような建物の配置にしようとすると、かなり狭小な住宅しか建てられないため、そのような建て方以外に選択の余地がありません。

私としては擁壁側の基礎の外周部(幅1m程度)には杭を配置できず、基礎の補強によって荷重を支えるという構造が本当に大丈夫なのかが分からず、安全性や建築費用の観点で不安を感じています。

恐れ入りますが、下記の質問にコメント頂ければ幸いです。


質問1:上記のような住宅の建築方法は適正かつ一般的(珍しくない)か?
⇒良心的な業者であれば引き受けないような無理な内容ではないか?

質問2:上記の建築方法に起因して莫大な追加費用が発生する危険性はないか?
⇒たとえば擁壁のやり直しなど

質問3:安全性に問題はないか?
⇒不同沈下の可能性が著しく高まるなど


最後に擁壁の図面に記載されていたスペックを記載しておきます。

尚、3番目の「逆LRC1.0m」は建物を配置困難な位置にのみ使用されており、これの底板上に基礎がかかることはありません。


●L型RC2.5m(砂質)L-S2.5(C) 100

条件
1.地耐力 100kN/平米以上
2.背面土質 内部摩擦角30度 粘着力0kN/平米 土の質量単位18kN/立方メート

3.支持地盤 内部摩擦角30度 粘着力0kN/平米
4.水抜孔は内径75mm以上の塩ビ管その他これに類する耐水材料を用いたもので、
3平米当たり1ヶ所以上設けること。
5.鉄筋の許容引張力度 200N/m平米以上
6.鉄筋コンクリートの4週圧縮強度 21N/m平米以上
7.上載荷重 10kN/平米以上

●L型RC2.0m(砂質)L-S2.0(C) 100

条件 上記のL型RC2.5mと同一

●逆LRC1.0mTYPE(ローム)逆L-R1.0

条件
1.地耐力 30kN/平米以上
2.内部摩擦角20度(背面土) 
3.土の単位質量16kN/立方メートル
4.水抜孔は内径75mm以上の塩ビ管その他これに類する耐水材料を用いたもので、
3平米当たり1ヶ所以上設けること。
5.鉄筋の許容引張力度 200N/m平米以上
6.鉄筋コンクリートの4週圧縮強度 21N/m平米以上


宜しくお願い致します。

> 現在注文住宅の建築用地として購入を考えている土地について、ハ
> ウスメーカーから提案されている建築方法に不安を感じており、専
> 門家としてのご意見を伺いたくお問い合わせをさせていただきまし
> た。
> まず、購入予定の土地や周囲の状況を整理すると、下記の通りです
> 。
> ・当該の土地は山林を4年ほど前に大規模造成を行い開発された分
> 譲地内の一区画で、周囲の区画と比較すると最も高台に位置してい
> る。
> ・上記分譲地の販売計画が最近まで凍結されていたため、現場は宅
> 地造成を行った当時の状態のままとなってお、当該区画を含め全区
> 画とも現在まで住宅は建築されていない。
> ・購入予定の区画の南側は市が所有する山林と隣接しており、山林
> 側は高低差13mほどの下りの自然がけとなっている。がけ下には民
> 家が1軒存在するが、擁壁やその他の人工的な土留め等は施されて
> いない。
> ・区画の北側は幅員6mの公道と平行に接しているが、道路面との高
> 低差が約2mあるため、高さ約2mのL型RC擁壁が設置されている
> ・区画の東側は隣区画の駐車場と通路(いずれも道路面と高低差無
> し)があり、同じく高さ約2mのL型RC擁壁を隔てて接している。
> ・区画の西側はRC3階建ての老人ホームが敷地の境界ギリギリに建
> っている。老人ホーム側の敷地はこちらよりも1mほど低いが、老人
> ホームの1F部分が一部地中に
> 埋まる半地下のような状態で建っており、境界に擁壁などは設けら
> れていない。
> ・前述のL型RC擁壁は造成時に建築されたもので、確認済証と検査
> 済証を取得している(いずれも現在取り寄せ中です)。
> ・いずれの擁壁も底板が内側(敷地の中心方向)に約2m程度伸びて
> いる。
> 上記の土地に延床面積40坪、建床面積20坪程度の2階建て木造2X4住
> 宅を建築したいため、あるハウスメーカー(●●社)に相談したとこ
> ろ、下記のような説明を受けました。
> 当該地域の建築確認を担当する県の土木事務所に(●●社の方が)確
> 認したところによると、「宅地面の一部が南側のがけ下から35度の
> 角度で引いた安息角よりも上方に位置している可能性があり、安息
> 角の斜線よりも上方に位置する領域に基礎を配置する場合には、鋼
> 管杭を使用した地盤改良を行い、杭の下端が安息角の斜線より下ま
> で届くよう設計する必要がある」との見解を得たとのことでした。
> その後F社が鋼管杭の打設について検討した結果、安息角の問題を
> クリアするには最もがけ側の部分で深さ5mまで杭を打設する必要が
> あるとともに、杭はがけ寄りの一部分だけでなくベタ基礎の全体に
> 配置しなければならず、現在計画している間取りでは大体40本ほど
> の杭を配置する必要があり、その費用は約100万円程度かかるとの
> ことでした。
> また、現時点では地盤調査をしていない段階のため、もし軟弱な地
> 盤であれば支持層まで杭を打つ必要があるので、その場合には杭の
> 長さが5mでは足りず追加の費用が発生する可能性があるとのことで
> した。
> さらに予定の間取りでは、建物の配置が北側と東側の擁壁に1m前後
> まで接近することを避けられず、前述のL型RC擁壁の底板が約2mほ
> ど内側(敷地の中心方向)に伸びていることから、擁壁の2m以内に
> 建物を配置しようとするとベタ基礎の一部が底板の上方に重なるた
> め、その部分の杭は擁壁の底板に干渉しない位置にずらして配置し
> なければならないのとことでした。
> もし擁壁側の基礎の外周部分に杭を打てない場合には、荷重のバラ
> ンスを考慮して基礎を補強した設計とする必要があり、これに追加
> の費用が発生するとのことでした。
> しかし、それを嫌って基礎が底板の上方に乗らないような建物の配
> 置にしようとすると、かなり狭小な住宅しか建てられないため、そ
> のような建て方以外に選択の余地がありません。
> 私としては擁壁側の基礎の外周部(幅1m程度)には杭を配置できず
> 、基礎の補強によって荷重を支えるという構造が本当に大丈夫なの
> かが分からず、安全性や建築費用の観点で不安を感じています。
> 恐れ入りますが、下記の質問にコメント頂ければ幸いです。
> 質問1:上記のような住宅の建築方法は適正かつ一般的(珍しくな
> い)か?
> ⇒良心的な業者であれば引き受けないような無理な内容ではないか
> ?
> 質問2:上記の建築方法に起因して莫大な追加費用が発生する危険
> 性はないか?
> ⇒たとえば擁壁のやり直しなど
> 質問3:安全性に問題はないか?
> ⇒不同沈下の可能性が著しく高まるなど
> 最後に擁壁の図面に記載されていたスペックを記載しておきます。
> 尚、3番目の「逆LRC1.0m」は建物を配置困難な位置にのみ使用され
> ており、これの底板上に基礎がかかることはありません。
> ●L型RC2.5m(砂質)L-S2.5(C) 100
> 条件
> 1.地耐力 100kN/平米以上
> 2.背面土質 内部摩擦角30度 粘着力0kN/平米 土の質量単位18
> kN/立方メート
> ル
> 3.支持地盤 内部摩擦角30度 粘着力0kN/平米
> 4.水抜孔は内径75mm以上の塩ビ管その他これに類する耐水材料を
> 用いたもので、
> 3平米当たり1ヶ所以上設けること。
> 5.鉄筋の許容引張力度 200N/m平米以上
> 6.鉄筋コンクリートの4週圧縮強度 21N/m平米以上
> 7.上載荷重 10kN/平米以上
> ●L型RC2.0m(砂質)L-S2.0(C) 100
> 条件 上記のL型RC2.5mと同一
> ●逆LRC1.0mTYPE(ローム)逆L-R1.0
> 条件
> 1.地耐力 30kN/平米以上
> 2.内部摩擦角20度(背面土) 
> 3.土の単位質量16kN/立方メートル
> 4.水抜孔は内径75mm以上の塩ビ管その他これに類する耐水材料を
> 用いたもので、
> 3平米当たり1ヶ所以上設けること。
> 5.鉄筋の許容引張力度 200N/m平米以上
> 6.鉄筋コンクリートの4週圧縮強度 21N/m平米以上
> 宜しくお願い致します。

-----回答ここから-----

> 質問1:上記のような住宅の建築方法は適正かつ一般的(珍しくない)か?
> ⇒良心的な業者であれば引き受けないような無理な内容ではないか?

回答1:土木事務所のいう安息角は確かに35度かもしれませんが、擁壁スペックでは内部摩擦角を30度としているので35度を30度と読み替える必要があると判断したほうがよろしいです。
よって、杭底(杭の最下端)はこの30度ラインの下(よりさらに1m程度深く)まで伸ばさねばなりません。
ここで、●●社の検討している杭は地盤改良杭の可能性もありますのでご確認ください。
採用予定の鋼管杭が基礎杭(地すべり方向に対抗し、かつ建物荷重を支えることも目的とした杭)として選定していればOKです。前述の地盤改良杭(建物荷重のみを支える目的の杭)は目的が異なりますので留意してください。

40本で100万円=1本25000円とは地盤改良杭の可能性が濃厚です。(ハウスメーカーなら安くできるのかもしれませんが・・・。)

> 質問2:上記の建築方法に起因して莫大な追加費用が発生する危険性はないか?
> ⇒たとえば擁壁のやり直しなど

回答2:擁壁スペックから地盤が砂地盤であることから「液状化」の調査と検討・考察を要します。
地盤調査のみならずボーリング地質調査が必須と思われます。
この結果や周辺環境などによって工事方法が変わりますので追加費用などは本件メール内容だけでは判断が付きません。
基本的には安定した地盤の確保とシッカリした基礎の設計が重要と判断されます。
(上ものはハウスメーカーなので無難にまとめられるかもしれませんが地盤や基礎などの下ものはどうでしょうか?)

> 質問3:安全性に問題はないか?
> ⇒不同沈下の可能性が著しく高まるなど

回答3:本メールの内容だけで「安全性に問題はないか?」と言われれば「なんとも言えません」とお応えする以外ありません。
回答2の内容と重複しますが問題が起きないようにするのが設計なのです。
工事費も工法によって変わりますので工法の選定と設計は一体で考えられねばなりません。
地盤、基礎、上ものその他のそれぞれを見ながら全体を設計することが求められます。
「安全を確保するためにどのような各部設計ならびに全体設計をするか」が重要です。

蛇足ながら、
外科医は患者さんの症状から患部を推定し、各種の検査データからいろいろな情報を読み取りながら患部の位置を特定して、施術に必要な専門医を集めて意見を聞き、存命に向けた施術方針を決めます。これを設計といいます。設計に基づいて万全を期して存命に向け施術します。これが手術です。
建築設計者もこうした外科医と同じで、いろいろな調査データから最善策は何かを見出していきます。(これを設計といいます。)

貴邸が永年的に建ち続けることは、地盤のみならず基礎や上ものその他について多面的な検討(設計)をすることによって確保されます。

よって、安全性の問題、機能性の問題、永続性(耐久性)の問題、経済性の問題、意匠性の問題、コストコントロール(工事費)などはすべて設計者の能力によります。
貴邸担当窓口の営業マンの能力によるところもありますが、設計者は営業マン以上の能力を有していることが大事で、営業マンよりもこの設計者の能力の見極めが最も重要です。