地下室ができるまで【その3】


13.コンクリート打設面のチェック

的確に密実に打設されたコンクリートは美しく艶もある。前11項でも触れたが、内壁面に内装を施す目的で「断熱材とボードの複合板」を型枠として打ち込んでしまうことはこうしたコンクリート打設面のチェックができない。隠してしまえば中身は誰も見ることができないので漏水や構造的欠陥原因があっても気付かない。何年かして漏水に気付き「剥がして見たら豆砂利だらけだった」と言う話しはよくある。密実にコンクリートが打設できているかどうかの判断は表面を見てわかるのであり、隠してはいけない。断熱材や内装を施工するのはこの後でも十分可能である。チェックできないことは認めてはいけない。


14.床仕上げに関わる下地の施工

コンクリート床面を調整し床仕上げに関わる下地を施工する。床面のレベル関係の打合せは重要だ。右手には地階から1階への内部階段の骨組みが造られている。室内のコンセント・照明を始め、電話配管、インタホン配管、LAN配管、エアコン配線配管、除湿・換気設備、新鮮空気などの設備関係は設計に盛り込んであるので設計に従って設備していく。同様にトイレ回りなどの給排水設備も着々と設備される。大切なことは地下室内の環境を整備し、地上居室以上の採光・換気・除湿システムを実現するかである。いかに快適に居住できるのかを追求してきた16年の結果をこのように実現化していく。


15.床面の仕上げ

いよいよ床面の仕上げに至る。正面奥のさらに向こう側には東面のドライエリアがあり、この写真アングルからの距離でも15mは十分にある。丸い穴の空いた壁面の向こう側は約8畳程度のデスクコーナーがある。また、右手階段の下がトイレであり、その奥には約7.5畳程度のミニキッチンコーナーと収納がある。手前の大きな空間は約30畳程度あり左側壁面全体に書棚が作られる。天井の高さは2.7mあるのだが空間が大きいのとスケールを比較する物が無いので空間の大きさがわかりにくい。


16.東のドライエリアの完成

東側のドライエリアである。コーナーには曲面のガラスを採用し、連続して透明のガラスを入れた幅2.7mのサッシを連層にしている。曲面ガラスのサッシの向こう側がデスクスペースである。ドライエリア上部には鉄製のグレーチングがはめ込まれており、その上を人が歩行することができる。光はもちろんのこと、雨や雪や風が入るので地上とほとんど変らない。奥行きと幅は約9.0mx約2.2mある。床の仕上げ面はヨーロピアンタイルを採用した。排水・換気計画やプランター給水用の水道なども設計に従って的確に設備になければならない。


17.西側のドライエリアの完成

西側のドライエリアである。こちらは西側違ってガードされている。鉄骨の階段は外部階段で地上からのアプローチである。奥の黒い扉が地下の玄関である。こちらのドライエリア上部にも東側と同様の鉄製のグレーチングがはめ込まれているが、この上には乗用車が載り駐車場の機能を持たせている。こちらも光はもちろんのこと、雨や雪や風が入るので地上とほとんど変らない。奥行きと幅は約7.2mx約2.5mある。床の仕上げ面はヨーロピアンタイルを採用した。できるだけ大きめのドライエリアを計画することで冬用タイヤなどの収納スペースも用意した。


18.地下室の完成

いち早く着目しいくつもの地下室を手掛20年。夏涼しく、冬温かいという蔵に似た地下室の室内気候は周囲を土に囲まれているという独特の保温性に起因する。また、防音・遮音効果の面では地上階より優れていることは言うまでもない。土地の有効利用の上でも、空間の機能追求の上でも、そして住人の生活活性化のためにもこれほど優れた「地下室」に着目しない手はないのである。誰もが今までは「地下室」は暗いもの陰湿なものとして建築計画を言い出すことも少なかったが、あなたの常識はこれらの事実を見て、少なからず変ったはずである。



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